● アルファ碁、たった1年2ヵ月で人智を越える神となるこの年末年始、またもや囲碁界に激震が走りました。
Googleのアルファ碁が、囲碁界の最強棋士のひとりイ・セドル九段を破ったのが昨年の3月のこと。それから9ヵ月、アルファ碁はさらなる進化を遂げ、囲碁界に降臨したのです。
・2016年12月29日~30日、囲碁サイト「東洋囲碁」で30戦
・2017年1月1日~4日、同「野狐囲碁」で30戦
「Master」というハンドルネームで登場したその正体不明の棋士(? )は、井山裕太六冠を含む日中韓のあらゆる強豪を打ち倒し、なんと60戦無敗で去って行きました。多くのプロ棋士たちが「Master」を、人智を越えた存在と評しました。1月5日、Googleは「Masterはアルファ碁の進化形である」「テストは終わった」と公表しました。
● ヒトはAI進化速度を予測できない
打ち手がほぼ無限にある囲碁は、もっともAIが苦手な分野だと長く信じられてきました。状況判断(その時点で優勢か劣勢か)の判断が難しい上に、何手も先の先を読むプログラムをつくるのは至難の業でした。
しかし2005年に「モンテカルロ法」をベースにした「Crazy Stone」が開発されて、状況は一変します。その名の通り、とにかく多くのサイコロを振る(打ち手をランダムにシミュレーションすることで、その勝ち負け予測をして手を決めていきました。 モンテカルロ法は並列処理に向いているので、マルチコアCPUをフルに活かせますし、コンピュータを増やすことでいくらでも性能を上げられます。
しかし新生アルファ碁は、それらを克服しただけでなく、さらに多くの「新手」を繰り出していました。それらはトップ棋士たちにも「悪手」と映るほどの常識外れの斬新な手であったと言います。
「人間では理解できない手が30手以内に出てくる。しかし、後にそれが良い場所になってくる不思議、マジックのようだった」(J-CASTニュースでの大橋六段のコメント)
アルファ碁はまずヒトから学びました。過去の思索の結晶である棋譜を3000万局分読み込み、それを手本としました。しかしその後は独学です。自らを相手とした強化学習で鍛え上げ、人智の及ばぬ領域に到達しました。たった1年余りで。
「私たちが永遠に変わらないと考えていた囲碁の真理が破壊された」(中国の古力九段のTwitterコメント)のです。
現在の汎用囲碁ソフトで東洋のZenはCPUが12coreでGPUが4、趙治勲戦では44coreのCPUでGPUが4だったから、本番ではもっと強くなるのかも